いわゆる桑の木で、古来、絹を織るための養蚕には欠かせない木であった。昔は、関東の北部を汽車で旅行すると、一面の桑畑が見られたものだが、今は殆ど見ることがない。植物園の木になりつつある。 養蚕用に畑に植えるものは刈り込んで低木であるが、自生しているものは10-15mの高木になる。雌雄異株で花は4月に咲く。京大農学部植物園で雌花を、豊中都市緑化植物園で雄花を写した。上部の写真は雌花、下部のものは雄花である。雄花には4個の雄しべ、雌花には1個の雌しべがある。集合果は7−8月には黒く熟し、そのまま食べられる。 学名はMorus bombycisで、クワ科クワ属である。bombycisは絹の意味。別名をクワ、あるいはササグワという。 ************************************************ クワ属の木にはいくつか種類があり、紛らわしいのでまとめておこう。 学名 英名 和名 別名 自生地 Morus bombycis Koidz. Japanese mulberry ヤマグワ クワ・ササグワ 日本養蚕 Morus alba White mulberry マグワ トウグワ・シログワ 中国養蚕 Morus australis Poir. シマグワ ヤマグワ 九州以南 Morus nigra Black mulberry クロミグワ 南西アジア Morus rubra Red mulberry アカミグワ 北米 中国での養蚕にはマグワ(M. alba)が用いられたが、日本ではヤマグワ(M. bombycis)も使われた。M. australisは九州南部以南の暖地で自生するが、別名をヤマグワと呼ぶことがあるので紛らわしい。マグワは鋸歯が小さく葉の先端が丸いが、ヤマグワは葉の先端が尖る。また、ヤマグワの花柄はマグワより長い。一般にクワ属の葉の形は、2裂したり3裂したりと、変形が大きい。マグワは実の色が、緑-->白-->赤-->紫、と変化するが、白く見える時期が長いので、White mulberryと呼ばれるのであろう。 |