いつもは地味な樹であるが、5月中旬になると急に、スダジイがあることに気付かされる。というのも,強烈な芳香を放つためである。ちょうど栗の花のような生臭い匂いを周囲にまき散らす。黄色い稲穂のような花が樹いっぱいに咲く頃には、一本の樹があるだけで100メートル四方が芳香に満ちる。花の全盛期には木全体がまっ黄色になり、遠くから見ると山の一部が変色しているように見える。黄色くなった山を見ていると、結構たくさん植えられていることに気付く。「椎」の仲間では、「まてばしい」も精力旺盛な樹であり,同じような匂いを放つ。 スダジイの実は、シイの実として昔から里人に愛用されていた。黒くなった堅果から採ったものは生でも食べられるが、少し炒ると香ばしくて美味しい。今も、京都府立植物園の大きなシイの木の下では、秋になるとシイの実を拾い集める人の姿が絶えない。 学名はCastanopsis cuspidata var. sieboldiiで、ブナ科シイノキ属である。やはり、シーボルトが日本で採取したとの名が付いている。 ************************************************************** 「今まであまり雌花を意識していなかったので、今年は雌花を写してみました。雄花は本年枝の下部で下垂し、雌花は上部で上向きにつくようです。雌花の柱頭が3裂しているのが見えます。」とのメールと共に、雌花や幼果が綺麗に写った写真を送っていただいた。 |