花のない8−9月に野山で見かける花である。遠くから見るとアジサイのようであるが近寄って見ると、深紅色の萼に5弁の白い花が突き出ている。枝や葉には強い悪臭があるが、花は良い芳香を持ち、虫が良く集まる。秋になると萼は美しく5裂して赤く染まり球形の藍色の果実をつける。日当たりの良い山野に育ち、3-5mの高さになる。 クサギの美しい藍色の実を集めて、青い煮汁を作り、これで布を染め上げることが出来る。臭木染めとも呼ばれ、薄い藍色になる。明礬などを用いて媒染するとやや濃い色が得られる。 学名はClerodendrum trichotomumで、クマツズラ科クサギ属である。8月中旬、京都府立植物園および豊中市の大阪大学構内で撮す。 ******************************************************************** 西伊予の三崎が故郷である竹井さんから、クサギについての興味深いお話を伺った。伊予地方ではクサギのことを「クジュナ」と言い、その若葉を食べるそうである。お便りに次のように書いて下さった。 「春先に若葉がひらききらないうちにつんだものを塩でもむとあわがでるそうです。それをゆでて大豆と煮豆のように甘く糸を引くようにたくそうです。....またこの木の芽で木の芽あえもするそうです。これは、おばは食べたことがないそうですが、めばるのような上等の魚を焼いてあえるそうです。なぜこの葉をたべるのかききましたら今のように野菜がなかったからだそうです。この木の根っこにはむし(ヨウチュウ)がいてこれは、甘辛く炊いてこどものかんぐすりにたべたそうです。..」。 昔の人々は、野山の木々のことを随分と良く知っていて、食用にしたり漢方に用いたり出来たようだ。我々は、自然に対する知識が貧弱で、共生する事が出来ない。恥ずかしことだと思う。 |