イスノキ−柞の木 (1999.4.18)
 Distylium racemosum


 豊中の柴原駅近くの公園の並木にイスノキが使われている。イスノキは「虫えい」といわれるコブコブが葉にたくさん出来るのが特徴で、時として気持ち悪く感ずる。この虫えいを吹くと、ヒョウと音がすることから、ヒョンノキと呼ばれることもある。結構大きくなる木で、庭木としても使われる。花は3−4月に咲くが、写真のように変わっている。果実は秋に熟してはじけ、黒い種子を2個出す。本州静岡以西に見られる。
 学名はDistylium racemosumで、マンサク科イスノキ属である。racemosumは花の付き方が左右交互に伸びて付くことを言う。
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 千葉大の西川先生から、土佐の檮原(ユスハラ)のことを教えていただいた。(2005.2.5)
 司馬遼太郎の「街道を行く」の檮原街道(脱藩のみち)にイスノキの記述があり、それによると、檮原街道の「檮」はイスノキの当て字らしいのである。「ユス」は古来日本ではイスノキのことを指し、1603年に出た「日葡辞典」にも「yusu」と出ているそうである。今は、なまってイスノキとなり「柞」の字が当てられているが、イスノキが沢山生えていたユスハラに漢字を当てるときに、記録者が間違って「檮」の字を当てたのであろうと書かれている。
 イスノキは四国、中国地方に多く分布する木であり、檮原にイスノキが多かったことは頷ける。ちなみに檮原街道とは、四国山脈の西の端、1055mの高研山の麓にある高知県檮原町と、海岸沿いの須崎市を結ぶ東西50kmの道である(国道197号線)。
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 またまた西川先生からイスノキにまつわる興味深いお話を紹介していただいた。3月7日の毎日新聞に載った記事で「アブラムシ 植物の傷を修復 体液放出し組織再生」と言うタイトルである。イスノキの「虫えい」に小さな穴を開けると、中に住むアブラムシの幼虫が集まって体液を出し、それで傷口に蓋をし、更に葉をつついて再生を促すと言うのである。その結果、1時間以内に穴がふさがり、1ヶ月後には植物組織が再生したそうである。動物が植物の傷を修復するのは前代未聞と言うことであった。自然の巧みさに驚かされる。(2009.3.7)



出始めの花穂                   葉の虫えい


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