紫の穂が風に揺れる様は美しい。クガイソウはそのたおやかな姿から人を引きつけて止まない。中部地方の多くの山で見ることができる。花は下部から咲き始めて先端へと向かう。それもよく見ると、まず雄花が発達して、雄花が最盛期を終えた頃に中央の細い雌しべが背を伸ばし、突き出てくる。花は筒状で雄しべは2本である。雌しべだけの時期が過ぎるとやがて枯れて、小さな刮ハが出来るのを待つ。ハコベラなどと同じく雄しべと雌しべの最盛期を変えながら咲き上がるのは、自家受粉を避けて他花受粉をしようとする植物の智恵のようだ。 伊吹山のクガイソウは写真で見るように、やや背が低く穂の長さも短いので、「イブキクガイソウ」として変種に区分することもあるようだ。その他にも、中部・関東に生える葉の細いヒメトラノオ、葉が無毛で日本海側に生えるヤマルリトラノオ、背が高く花穂も長い北海道のエゾクガイソウなど、類似種が多い。 学名は Veronicastrum japonicumで、オオバコ科クガイソウ属の多年草である。花期は7−8月。本州の、日当たりの良い山地の草原に生える。和名は、段になって輪生する葉の様子による。植物分類は、昔はゴマノハグサ科とされていたが、最近はオオバコ科が出来て、こちらに分類される。 |