北海道七飯町の「七飯の大トチノキ」 (2003.8.7 西村さん)


 西村さんからの、北海道の巨木もこれで3本目となる。今回はトチノキである。トチノキは環境庁調査で順位の変動が激しい木の一つであるが、送っていただいた木は、樹勢も良く、永く順位を保持しそうである。以下は西村さんによる解説です。
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 函館市の隣にある七飯町(ななえちょう)には巨木が多い。そのうちの一つ、北海道全樹種中3位のトチノキを8月7日に訪問しました。文献にはトチノキとしては全国10位とあります。
 函館新道のすぐそばです。昔から湧水のある場所で、町の水道の施設があります。 管理も町の水道課が行っているとのことです。50m×80m位の範囲に、湧水池(エゾアカガエルの産卵池)を中心に原始に近いままの森が残っています。大きな樹はトチノキ、クリ、カツラ、北コブシですが、ほかにもミズキなど多くの樹種が見られます。北コブシは、目測ですが幹周2m近くはあります。こんな大きな北コブシは始めて見ました。飲料水のある場所として神聖視され、大事にされてきた場所であることが分かります。水気が多く、長靴が必携です。
 大トチノキは幹周860cm、樹高25m、推定樹齢300年以上、堂々たる体躯で枝の張り出しも立派で葉もふさふさと大きく、葉の虫食いも見られず健康そのものと言う感じで、文 句無く森の主です。根本には空洞があり、大人が立ってくぐり抜けられます。空洞の中をよく見ましたが、腐った部分はありません。頑健そのものです。たっぷりとした水分補給と、周囲に生い茂る木々達に守られた位置取りがこの巨樹を健康にしているのでしょう。静かな森の中で気持ちの良い空気を吸いながら、巨樹と対話しつつ1時間ほど過しました。森の周囲は畑と道路と廃土置き場です。2年前には函館新道が数m隔てて作られました。巨樹をめぐる環境がこれ以上悪化しないよう祈りながら帰路に着きました。
 七飯町までは函館からJRやバスがあります。本町が町役場のあるところで、役場からは徒歩10分くらい、ちょっと分かりにくいところですが役場で道順を教えてくれます。私にメールを下されば地図を書き送ります。
                           mnisi@abox22.so-net.ne.jp 西村
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 七飯町役場は、JR函館本線の七飯駅で降りて、北北東800mの所にある。木のある桜町へはここから北に10分ほど歩く。なお、環境庁の調査によれば、かつて北海道1位とされていた「名寄のミズナラ」が倒壊したため、「七飯の大トチ」が1位となっている。しかし、先々回に西村さんからお寄せいただいた「小金湯温泉の大桂」は10.5mの幹周があり、こちらが本当の北海道1位と言うことになる。最下段に幹周の定義や、それについての感想を書きました。



 幹周による北海道の巨木順位は、環境省が1991年に行った全国調査の結果としては、1位が名寄のミズナラ、2位が七飯の大栃、3位が祖神の松となっている。  しかし、その後全国巨樹・巨木林の会などの支援で2000年に環境庁が行ったフォローアップ調査で、全国的にかなりの順位の入れ替えがあった。現在は、名寄のミズナラが倒壊したため「七飯の大栃」が北海道最大の巨木とされている。しかし、西村さんから送っていただいた小金湯温泉の大桂は幹周が10.5mあり、環境庁調査には載っていないが、北海道最大の木ということになる。ただ、カツラの幹周についてはひこばえが多いために、その決定が難しく、主幹が枯死している場合にはどのように判断するのか微妙な点がある。このような意味で環境庁調査からはずれているのかも知れません。
 巨木の順位について、西村さんは次のような感想を述べておられます。
 「私はどれが1位であっても構いません。ふと出会って、ウワ-、これはすごい!!、そういう感動が得られればそれで良いのであって、その後でこういった感動を孫子の代まで続かせたいといった、我々の代の責任を多少でも思い起こすならそれで良いのだと思います。数字にしてしまうと何かと揉め事になってしまうのが我々人間の業です。」
 私も全く賛成です。幹周という数値を出して敢えて順位を付けてはいますが、巨木の美しさや巨大さの与える感動は、見る人の気持ちや、木々の育っている環境、樹種によって様々であり、幹周が最大のものが最も大きな感動を与えるとは言えません。あまり幹周にとらわれず、巨木をありのままに受け入れたいものです。その意味でも、お近くの巨木に先ず巡り会っていただくことが何よりであると思います。
 * 環境庁によれば、幹周は地上1.3mの所で測定し、斜面に生えている場合には山側の地上から1.3mの所で測定します。幹周が3m以上のものを「巨樹」と定義します。根上がりの場合には、根と認定できる場所の上部から1.3mの所で測定します。また、単幹でない場合には、1.3mの場所での個々の幹の幹周の合計を使うことになっています。この時は株立ち何本と記述し、主幹の幹周も記述しておきます。環境庁は、順位を付ける場合には単幹のものを採用しているようです。


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