山東さんに案内していただいた京北の巨木の圧巻は、下黒田の伏条台杉群である。威圧感のある杉の巨木が、次々と現れるのに圧倒された。林道からは、このような巨木群が存在するとはとても想像できないが、一歩森に足を踏み入れると、異次元の世界に迷い込んだような感覚を覚える。 杉の巨木と言っても、真っ直ぐに伸びた木ではない。根元が異様に膨らんで台のような形状をなし、その台の上に幾条もの太い幹が天を突いている。まるで数本の巨木の根を平たく合体させたような形で、これが伏条台杉と言われる所以である。このような形が出来たのは、遠い昔から続いてきた伐採法に由来している。杉の巨木を切り出す際に、その根元ではなく、根ノ上2-3mの所で伐採し、これを放置しておく。すると、切り株の上に新しい枝が出て、100年余を経て数本の巨幹に育つ。これを切り取って更に100年を置くと、また数本の巨幹を収穫できる。このようにして数百年、台木の幹は太り、驚くばかりの巨木に成長する。京都の庭園には、この伏条台杉を小型化して取り入れたものが多く見受けられる。 さて、下黒田の伏条台杉群は大小さまざまな巨木が林立しているが、中でも王者の風格を示しているのが平安杉である。最下段に、他の杉と共にその位置を示してある。根元の幹周りは15.2mにおよび、縄文杉の16.1mに比肩できる。その根は近くに育っていたコシアブラの木を巻き込んで成長を続けている。京北の森の中には、更に大きな伏条台杉が存在すると考えられている。この森では、平安杉に次ぐものは大主杉で、幹周10.8mである。 下黒田の伏条台杉群へ行くには、京都から周山街道を北上して京北町役場を通り、477号線に入って15km、上黒田の集落から林道広域片波線を北上する。かなり高度の高い地点に巨木群の森への入口がある。個人でもアクセスできるが、京北町では、森林保護の観点からガイドツアーを推奨しており、 申込は、ウッディー京北(電話0771-52-1700)で受け付けている。ウッディー京北へは、JR京都駅から出るJRバスの終点「周山」で降りる。バスは1時間に1本程度走っている。 |