数少ない特別天然記念物に指定されている、石徹白の杉は、目通り幹周り14m、樹高24m、樹齢1800年の見事なスギである。
夏のスギはすでに紹介したが、小森さんがバイクを駆って、紅葉の石徹白の杉を写してこられた。 もちろん杉が紅葉するはずはないから、この老樹に寄生した木々の紅葉である。 真っ青な空の下、「白スギ」と言われる通りの白みがかった樹皮が印象的である。 上部の大枝はほとんど無くなっているが、そこに寄生した広葉樹の紅葉が美しい。 下に、お馴染みの小森さんの紀行文を載せました。 |
<石徹白の大杉>
翌朝は澄み切った青空に小鳥たちが楽しげに囀っていた。半ば紅葉した山々は
青い空に稜線をくっきりと浮き立たせている。雨に洗われた清澄な空気は
一切の曇り無く、九頭竜の湖面にくっきりと木々の彩りが映っていた。
白鳥から少し北上して石徹白の村落に向かった。
白山中居神社に巨大な杉があるがもっと石徹白川を遡ったところに
樹齢千八百年の大杉がある。五年前に訪れたときは河川工事で辺りを掘り返していたが、
今は穏やかな川面に紅葉の落ち葉が漂っている。前夜の雨の名残の水たまりに
構わず乗り入れて走った。お陰でせっかく乾いたブーツが泥まみれになってしまった。
山頂にある大杉の所まで430段余りの石段が続いている。
5年前も結構きつい階段だと思ったが、今回は更にそのきつさが増していた。
3段上っては息を切らし、5段上っては膝を屈伸させて痛みに耐える。
今度は石段の修験者になってしまった。足腰の衰えを痛切に感じてしまった次第である。
尤も膝の怪我があるからという言い逃れも許されるかもしれない。 汗だくになって登り切った山頂に「石徹白の大杉」は鎮座していた。 上の方はかなり昔に折れてしまって聳え立つ姿は見ることが出来ないが、 神々しく佇む太い幹からは木霊の宿りが伺える。 見上げると突き出た梢の袂から紅葉や黄葉が鮮やかに戦いでいた。 杉は紅葉しない筈とよく見ると、 飛んできた種が着床したのであろうモミジやハゼノキが宿っていた。 周囲を巡ってみると土が軟らかくふかふかと靴がめり込んでいく。 いろいろな灌木の落ち葉が積もって腐植土になってはいるのだが、 爪先で掘り返してみると、かなりの地中生活者達が蠢いていた。 更にあちこちに盛り上がりが出来ていて多くのモグラの存在が見て取れる。 栄養豊かで風通しの良い土のお陰でこの大杉もまだまだ長生きするであろうと思われる。 ただ、周囲の木立を切り開いてしまった人の業には苦言を呈さざるを得ない。 恐らく人の手が入っていなければ、遙かに聳える大杉の姿が残っていた筈である。 |