岐阜県根尾村の「薄墨桜」(2006.4.20、中島さん)


 中島さんから素晴らしい薄墨桜の写真を送っていただいた。さすが写真家である。この桜の美しさと、逞しさが共に見事に映し出されている。例年桜の頃には、車が渋滞し、木の周りが人で溢れるのだが、写真には静かな雰囲気が漂っている。良いタイミングを選ばれたものだ。中島さんのメールの一節に次のようにあった。「...、小旅行で岐阜にいきました。高校時代の友人の案内で、初めて薄墨桜を見ました。薄曇の中、散る前の花の色は、文字通り薄墨色の桜でした。
   薄墨に色を紡ぎて幾百年神代につなぐ深山の桜木
その姿、神秘的ですらあります。」
 この桜は、東の「山高神代さくら(山梨県武川村)」と並んで、日本の巨木桜の両横綱である。また、長野市の「素桜神社の神代桜」、山形県長井市の「伊佐沢の久保桜」と並べて、日本の桜の三大巨樹という場合もある。蕾のうちは淡紅で開花すると薄い墨色に変わることから薄墨桜と呼ばれている。
 樹高17.2m、幹囲9.1mで、国指定の天然記念物である。どっしりと構えた姿は、樹齢1500年と伝えられるのももっともと感じさせる。9年前にファイザー製薬の藤本さんに連れていってもらったが、その時代のカメラは25万画素しかなく、桜に悪いような写真しか載せられなかった。今回の中島さんの写真で、桜もようやく許してくれよう。
 JR大垣駅から第3セクターの樽見鉄道に乗って終点の樽見で降りる。川を渡って20分ほど歩くと山の手に薄墨桜がある。根尾村の財産として大切に保存されている。昭和24年にこの桜が枯れかかった時には、238本もの若木の根をつなぐことによって再生することに成功したと、最近出来たらしい立派な石碑に書かれている。明治24年死者8000人を出した濃尾地震(マグニチュード8.0)のことも、この木は知っているはずである。近くには、これも国の天然記念物になっている巨大な「根尾谷断層」(濃尾地震で生成した)がある。





薄墨桜の二世



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