小森さんから、いわきの中釜戸のしだれ紅葉の写真と手記が届いた。 JR常磐線の泉駅で降りて上釜戸行きのバスに乗って中釜戸で降りる。 少し歩くと、山麓に観音堂がありその池のそばに2本のシダレモミジが見える。 ともに幹がくねった奇形樹で、国の天然記念物に指定されている。 大きい方は、樹高6.8m、目通り幹周り3.5mのイロハカエデである。 以下は、小森さんの手記よりとりました。 「もこもこぐねぐねうねった枝に、びっしりと張り付いた苔や菌類。 どこが樹皮だか苔だか分からない。その佇まいは見栄を切った歌舞伎役者 のようでもある。 中釜戸のシダレモミジ。茨城県いわき市南部の内陸に入った所に ひっそりと佇んでいる。常磐自動車道いわき湯本I.C.で降りると、 県道を西ヘ進み、常磐道の下をくぐってしばらく行ったT字路を思い切り左折する。 再び常磐道をくぐって5kmほど行って、うねうね曲がる道の左カーブにさしかかる右手に 「中釜戸のシダレモミジ」の案内標識が見える。その標識の指す方向に入り込み、 小さな橋を渡って民家の脇を左の方に回り込むと、農家の庭先の路地脇に 御影石に刻み込んだ銘板が見える。その路地の先の山蔭に小さな祠と、 その横にこじんまりとした垂れ紅葉が臨める。とことこ歩みを進めるうちに、 次第に目に入ってくるのがもこもこぐねぐねうねった枝なのである。 春の新緑の頃は古木然とした枝に、ピチピチの若葉が映える対比が面白い。 夏の緑深い葉に見え隠れするもこもこぐねぐねもまた趣深いものがある。 秋の紅葉、これがまた難しい。紅に染まる時期が区々なため、訪れる度に 肩すかしを食らう。少し遅らせて訪れた時にはすでに葉が落ち、もこもこぐねぐねは、 そのグロテスクな姿を恥ずかしげも無く曝しているのだ。 葉を落とす前は、全部が紅に染まるというよりも、緑、赤、黄色、茶と いろいろな色を取り混ぜて着色している。 それが煌びやかな衣装を纏った歌舞伎役者に見えるのは私だけだろうか。 しかし、今年の紅葉はまた違った。秋も深まった頃なのに、 夏の装いのままなのである。蒼々とした赤子の手のような葉を繁らせ 一向に秋らしい紅葉を見せる雰囲気すらないのである。近くの農家の人に聞けば、 七年に一度ぐらいしか紅葉しないとのこと。 ということはこの紅葉の姿を見に通いだして五年だからあと二年通わないと 真の紅葉は見られないということか。せっかくだからとビデオを回してその姿を収め、 写真にその画像を留めた。」 |