北海道士別市の「祖神の松」
 (2003.7.17、西村さん)


 北海道では第2番目となる巨木の写真を西村さんから送って下さった。イチイの木としては北海道第1位、全国でも第2位の巨木である。とても詳しく、現場の様子が生き生きと描かれた説明文も付けていただきました。 ****************************************************************
 道北の士別市に北海道で第一のイチイの木があります。文献では全国2位とのこと。目通り幹周は750cm、樹高18m、推定樹齢1000年、北海道記念保護樹木です。7月17日の夕方近くに訪れました。
 林道に10台ほど駐車可能な場所があり、「士別市指定文化財 祖神の松 この階段をお上がりください」と書かれた案内板があります。階段を30mほど上がると、巨木がどんと目の前に現れます。天塩川の支流、剣淵川を見下ろす斜面で1000年の時を経た巨木です。太く荒々しい木肌がその年月を忍ばせます。3mほどのところで二股に分かれています。10mあたりから上は支枝が少なく枯れかかっている印象です。しかしそれから下は支枝が多く、葉も豊富でまだまだ元気な様子です。
 裏側に回ると、大きな裂け目が高さ5mほどまで広がり、黒く塗られたウレタンの保 護材が充てられています。また、高さ8m位のところに細木を当ててワイヤが巻きつけられ、斜めに地面まで引かれています、大風対策のようです。地元の有志が大切に面倒を見ている様で、山の守り神として山仕事に従事する人々から尊厳視されてきたとの看板の記述がうなづけます。
 夕方に近かったせいか、ヤブ蚊やヌカガが多く、眼の周りや手首、ズボンの上からも刺されながらの撮影でした。他を圧倒する巨木でありながら何か暗い印象を受けたのは何故だろうか。今度はもっと明るい時間に訪問しようと思います。
 JR士別駅から約5Km。車で10分。車以外に公共交通機関はありません。国道40号線から幌加内町へ向かう道道239号線に入り剣淵川を渡って200mで右手に案内標識があり、そこから林道に入る。川の堤防に当たって案内板に従って未舗装の道を数分走ると駐車可能な場(上記)に出ます。
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 ちなみに環境庁の調査によれば、イチイの巨木の第1位は、岐阜県荘川村にある幹周7.95mの木である。また、3位は、長野市国見にある幹周7.00mの木とされる。「祖神の松」は北海道の全樹木中では、第5位の巨木にあたるということである。イチイを「松」という理由について西村さんは、北海道での習慣では針葉樹一般あるいはこれに似たものを「松」と呼ぶこと、イチイを「水松」とも書くこと、また、北海道には杉や桧が少ないことが関係しているのではないかと推測しておられます。
 なお、西村さんは道北の巨木を撮影しようと、苦労されて果たせなかった様子を、これも生き生きと書いて下さっているので、最下段にご紹介させていただきます。北海道で西村さんと一緒に巨木探訪をされる同好の方が居られるといいですね。



 先日、道北地方の巨木に会おうとしましたが、3本続けて会えませんでした。文献では、「道有林美深経営区224林班52小班」、・・・などと出ているので、当該営林署に寄って聞いたのですが、地図の上で「このあたりです、私は行った事が無い」との答えだけで、おおよそ見当をつけて近くまで行ったのですが、最後は藪こぎをしながら自分で探すしかなくなり、服装・装備・時間の関係で今回は断念しました。
 天塩営林署の場合は、担当課長は答えられず、部下を呼んでも分からず、何年も前に現場担当だった人の所へ3人で出かけて、ようやく「私は見たことがないが、同僚からすばらしいミズナラがある、と聞いている。(地図を示しながら)、この稜線に沿って登っていくと左側にあるはずだ。山中の藪こぎです。一人で行くのですか?」との答え。
 とにかく車で行ける所まで行って様子を見ようと思い、道道から林道に入り、ゲートで下りて、後は徒歩で林道を登ったのですが、言われた所は新しい貯水池ができていて聞いた様子とは少し違う。この崖をよじ登って後は藪漕ぎかとおよその見当は付きましたが、この山奥で一人でのこのすさまじい藪漕ぎはかなり危険を伴うことが明らかで、「一人で行くのですか?」との問いの意味が分かりました。マタギやキコリや開拓民ならこの位はやった筈だとも思いましたが、ただの遊びや興味だけでそこまでやるか?と思い直し引き返しました。熊も出そうです。同じ趣味の仲間を作って一緒に行動するしかないようです。
 営林署を訪ねてみて、改めてその管理体制がずたずたにされていることが分かりました。組織が縮小され、現場を見たことの無い署員が大半である、こんな状況で日本の山林が守れるのか、深い疑問が残りました。署員の方々は山林の保存・整備や、巨木への道標及び道の保持など考えておられるようですが、予算や人手が極端に限られているようでなかなか手が回らないのが実情と見ました。事実、課員は巨木までの刈り分け道を作りませんか?と課長に問いかけ、課長はうーんと言ったまま考え込んでしまった、というシーンもありました。少しでも予算をカットし、わずかでも利潤を得ようとする国の森林対策がネックと思います。見方が偏っていて、採算第一主義です。国家100年の計など微塵もありません。
 北海道の巨樹に関心のある方、ご連絡頂ければ幸いです。
                mnisis18@w3.dion.ne.jp 西村

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