神奈川県小田原市の「早川のビランジュ」 (2001.10.14)


 珍しいので、一度見たいと思っていた木である。ビランジュと言われるのは、木の肌が赤く荒れているためで、いわゆる糜爛(びらん)した肌を連想さすからであろう。一般にはバクチノキと呼ばれる木である。バクチノキと呼ばれるのも、やはりこの木の幹が、博打で身ぐるみ剥がれてしまった姿を思わせるためである。サクラ科の木で秋に白い花を付ける。本州西南部に分布し、この木は東北限とされる。北限にある木が日本で一番大きいとは見事である。
 新幹線を小田原で降りて在来線に乗換て一駅、「早川」で降りて歩く。列車の車窓からの景色を注意していると、早川駅の手前右手(西側)の山の斜面に沿って、「ターンバイク」という字が書かれたハイウエーがあり、斜めに山を登っている。このターンバイクと山に挟まれた狭い谷間に早川のビランジュがある。駅を降りて北西に進み、ターンバイクの足元にたどり着いたら、料金所のやや上のところで、ターンバイクの下をくぐって山にとりつく。小さな木の道標があるが、現在残っているかどうか心許ない。排水溝のような流れ(雨が降らなければ水は流れていない)に沿って急坂を上ると、突然目の前に大きな名標板が現れる。
 鬱蒼と木の茂る薄暗い谷間で、赤い肌の巨木を一人眺めていると、何となく怖さが湧き上がってくる。木の樹高は25m、目通り幹周り5.2mで、大正12年に国の天然記念物に指定されている。足元が悪いので、滑らないように注意していく必要がある。この谷の上はミカン畑になっており、秀吉の有名な一夜城の城趾へと続いている。



小森さんから届いた、早春のビランジュの木−幹の赤さが目立つ(2004.3)


木々のリストへ戻る